全てが終わりを告げる時
「倉渕会長は今日、突然とある路地へ向かった。

まるで、何かに操られるように、導かれるように……

違うかい?」


「!? ……ああ、そうだ」


聞いていたかのような、その台詞の正確さに、倉渕羽津摩は目を見開いた



「生まれながらにではなく、途中から〝力〟を持つようになることを、僕らは〝覚醒〟と呼ぶ。

覚醒した人間が持つのは、超能力だよ。


あの路地は、〝力〟を持たない者を追い出し、〝力〟を持つ者を引き寄せる。


だから倉渕会長は、今日、あの路地へやってきたのさ。


それで、倉渕会長。 最近使えるようになった能力は、どのようなものか把握しているかい?」


漸く落ち着いたらしく、いつも通りの平然とした口調で、倉渕羽津摩は話し始める



「ああ。 にわかには信じがたいだろう話なんだが……

……あ、いや、お前たちはその信じがたい能力を、既に所持しているんだったな。

それなら別に、俺の馬鹿げた話も信じてもらえ……」


「さっさと話してくれないかな?

会長の無駄で長ったらしい話を聞いている暇はないんだよ」


だらだらと前置きのような言葉を紡ぐ倉渕羽津摩にしびれを切らし、にこやかな笑みを浮かべたまま、慎也がピシャリと言い放った


「す、すまない……えー……

つい先日、〝瞬間移動〟というものができるようになった。

それと、気のせいかもしれないが、記憶力が上がったというか、すぐに物事を記憶できるようになった気がする」
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