全てが終わりを告げる時
合図とともに、倉渕羽津摩が姿を消した


そして一拍も経たぬ間に



パアァンッ!



「───ありゃ、ちょっと見くびりすぎちゃったみたいだね?」


破裂音がして、柚希が恥ずかしそうに笑った


その手には、割れた風船が握られている



「なるほど。 速さは十分にあるみたいだね」


良い人材だ、と嬉しそうに頷く慎也



「───王寺、そんなに余裕そうにしていていいのか?」


すると倉渕羽津摩は、次に慎也を標的としたらしく、慎也の後ろへと瞬間移動をした


「うん、余裕だからね」


瞬時に慎也は横へ跳び、距離を取る



「いくら距離を取っても無駄なことくらい、編入試験で満点を取ったお前なら、分かっているだろ?」


「さあ、それはどうかな?

これに学校の勉強なんて関係ないし、人の可能性を勝手に潰すのは、良くないと思うよ。

全校生徒を統べる生徒会長様なら、特にね?」



倉渕羽津摩が距離を詰める度に、素早く跳び、宙を舞う慎也


ただ逃げているだけにも関わらず、華麗に踊るその姿は、踊り子の熟練の技のようで



「慎也すごい……きれい……」


柚希はそんな彼を、瞳を輝かせながら見つめていた



そして、暫くの間その光景を眺めていれば


ピピピピ!! ピピピピ!! ピピ……


予めセットして置いたのだろう


部屋の端に設置されている本棚の上で、タイマーがけたたましい機械音を響かせた
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