全てが終わりを告げる時
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柚希と出会ったのは、七年前の春の終わり


星が僅かにチラつき始める、黄昏時のことだった



何気なく散歩をしていた時、狭い路地で、白く、一般的なものより少し大きな犬を見つけた


幼い僕は、その丸くなって震える背中に声をかける───何も、考えずに……



『ここで何をしてるんだい? 犬くん』



今思えば、なんと危険な行為だったんだろうと、呆れてしまう


陰陽師の家系に生まれたからには、もちろん霊力も、それなりに備わっていて


意識するまでもなく、視えてしまうのだ


幽霊や妖怪などの、人には見えぬそれが


声をかけたあの犬が、もしも柚希ではなかったなら、僕はどうなっていただろう……



目の前のそれに声をかければ、恐る恐るといった様子で顔を上げた


『!! っ僕が、見えるの……?』


脳に直接届く声で、話しかけてくる


ああ、この犬は妖怪なのかと、幼かった僕は、その時初めて理解した


見たところ危害を加えられることは無さそうなので、継続して話しかける



『妖怪にも、悩みがあるの?

僕で良かったら、話を聞いてあげるよ』


すると、目の前の犬は目を丸くし、そしてとても小さな声で言った



『……たす、けて……』


今度は僕が、目を丸くする番だった
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