全てが終わりを告げる時
まさか、助けを求めてくるとは思っておらず、面食らう僕に、犬は話し続ける



『僕、ある人間に殺されて、こうなっちゃったんだ。

今、その人に追われてて……だから、助けてほしい……』


事情は全くと言っていいほど、分からなかったが、追われていることだけは把握する



『うん、分かったよ。

……もし良かったら、僕の家においで。

話はそこで聞こう』



家の門を開けば、まだ両親は帰ってきていないようだった


犬を連れて門をくぐり、玄関を通り、2階の自室へ入る



向かい合って床に座れば、犬は再び、話し始めた


犬───彼の話はこうだった



彼を殺し、そして現在、彼を追っている人間は男で、名を高橋というらしい


高橋は数年前まで霊能商法を生業としており、隣町では、にわかに噂されていたようだ



だが、技術が進歩した現代では、霊能力を信じる人間は徐々に減少していき、

廃れたその商法では生計を立てられなくなった高橋は、普通の仕事へ就こうとした


しかし、過去の噂は悪い尾ひれが付いた状態で広まっており、陰気な見た目も相まって、受け入れてくれる場所はどこにも無かった



そんな人間達を憎み、恨んだ高橋は、自分が恨んだ人間を、病気や死に至らしめることができる〝狗神〟を使役しようとした


そのために、野良犬だった彼を捕らえ、飢餓状態にし、その首を打ち落とし、土へと埋め……


そうして、狗神としての彼を生み出したのだった
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