全てが終わりを告げる時
『……今話したことは、高橋が毎日、独り言のように呟いていたことなんだ。


僕は狗神になっちゃったけど、生きていた頃、時々ごはんをくれた、人間たちのぬくもりが忘れられなくて……

呪うなんて良くないって何度訴えても、高橋は聞く耳を持たなくて……


憑き物としての性質上、僕は高橋から離れられなくて……っ……

───高橋に言われるがまま、僕は何人もの人間を呪い、そして殺した』



苦しげに話す彼は、人間を呪う生き物でありながら、それを頑なに拒む───そんな優しさと愛情を持った狗神だった



『高橋の隙を突いて、この町まで逃げてこられたけど、あの人はきっと、僕を探して、捕まえに来る。

……だって、あの人は恨んだ人間を全員呪う気で、あの人の復讐は、まだ全然、終わっていないから』



高橋という男は、いったいどれほどの人間に、恨みを持っているのだろうか


そんなこと、赤の他人で部外者だった僕が、分かるはずもない


……でも、一つだけ、僕にも分かることがある


それは……


〝彼を捕まえた高橋は、また彼を殺人道具として利用する〟ということ


何か、彼を助けられる策はないだろうかと、思考を巡らせる


『どうすれば……どうすれば君を、助けることができる……?』



目の前で俯く、この慈悲深い狗神を救いたいと、ただひたすらに考えた
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