全てが終わりを告げる時
すると、そんな僕を見た彼は、はっと何かに気付いたような動作をし、すぐに声を発した



『高橋が君のことを知ったら、僕を匿ったことで、君も恨まれちゃうかもしれない。

そうしたら僕は、君まで呪い殺すことになっちゃうよ……』



そう言い終わるや否や、スクッと立ち上がった彼は、僕に向かって深々と頭(コウベ)を垂れた



『……助けようとしてくれて、ありがとう。

話を聞いてくれただけでも、すごく嬉しかったよ。

本当にありがとう』


鼻先で器用に戸を引き、部屋を出ていく彼



『……待って!!』


そんな彼の後ろ姿に、僕は叫んだ


廊下に出た彼が、振り返る



『……君はさっき、

〝憑き物の性質上、離れられない〟と、そう言ったよね?』


僕の問いに、こくりと悲しそうに頷く彼


彼の目を見て覚悟を決めた僕は、意を決して、微笑みながら彼に言った


『───それなら僕に憑けばいい。

そうすれば君は、高橋から離れられるよ』


驚いた彼は、僕の近くまで駆け戻ってくる



『自分で何を言ってるか分かっているの!?

僕に憑かれるってことは、君に不幸が付き纏うってことなんだよ!?』


そう


狗神を使役する者は、人を呪うことができるが、自身にも災いが降りかかるのだ


『ああ、もちろん知っているよ。

陰陽師の血を引く者として、妖に関する書物は、全て読み漁ったからね』
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