全てが終わりを告げる時
困惑気味に揺れる琥珀色の瞳を見つめ、自嘲気味に話す



『少し前に読んだ本にね、こんなことが書かれていたよ。


〝人間は愚かで、世界は残酷だ。

大切な何かを守るために、人は別の何かを犠牲にする〟とね。

僕もれっきとした一人の人間だから。

まあ、出会ったばかりじゃないかと言われれば、言い返せないんだけどね』



僕の言葉に、瞳を潤ませる彼


『……っ、出会った、ばかりじゃないか……』


『うん、確かに僕らは、今日出会ったばかりの関係だ。

でも、君の心の温かさを、僕は気に入ったようでね。

単純に、君を守りたいと、そう思った』


そんな顔しないでと、彼の頭を撫でれば、彼は〝言い返してるじゃん〟と、泣きながら笑う



『それに、まだ僕は未熟だけど、それでも陰陽師だ。

降りかかる災いなんて、術で撥ね除けてしまえばいいさ。

約束する。 僕は君を守って、災いだって撥ね除けると。

だからね……どうか君を、僕に助けさせて』


『っ……ありがとう』


彼は嬉しそうにそう言った



『……そういえば、自己紹介がまだだったね。

僕は慎也。 君は?』


そう聞けば、彼は少し顔を曇らせる


『……無いよ。

生きている時は野良だったし、高橋にも道具としてしか使われなかったから』



『……それなら、〝柚希〟はどうかな?』


『ユズ、キ……?』
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