全てが終わりを告げる時
柚希と暮らし始めてから、2ヶ月が経とうとしていた時、悲劇は起きた



『……や……慎也っ!!』


その日僕は、全身を襲う熱さと、柚希の呼び声で目を覚ました


瞼を持ち上げた時に、最初に見えたものは、うねりながら迫り来る炎だった


勢いよく起き上がり、見回せば、四方全てを炎に囲まれている


状況が飲み込めず、戸惑っていると、動く炎の向こう───窓の外が、ちらりと見えた



炎の光でそこに見えたのは、一人の不気味な雰囲気を纏う男と、両脇に並ぶ、怪しげな装束を身に纏った、複数名の人間


『っ……高橋が僕を見つけたんだ。

近くにいる人達は、霊媒師や呪術師、それから、この近くに住んでる、不幸を恐れる霊感持ちだと思う』



狗神は、人を呪う仕事の人間において、藁人形と同価値か、それ以上の価値を持つ商売道具


そして、犬神憑きの周囲は、憑かれている本人と同じく、災いが降りかかるという


つまりこれは、羨望や恐怖の念を抱いた人間達による放火なのかと、瞬時に理解した



『───っお父さんとお母さんは!?』


両親の自室は1階


窓の外は濃い闇が広がっていたので、まだ夜中だろう


こんな時間、両親だって眠っていたはずだ



戸を引こうとする僕の服の裾を、柚木が引っ張る


『その引手は金属製だ!

今触ったら大火傷を負うよ!』


『そんなの構っていられるか!

人の命が懸かってるんだよ!?』


『もう遅いんだよ!

慎也のお父さんたちの魂の気配は、僕が目覚めてすぐに途絶えたんだ!!』
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