あの時手が伸ばせたなら。
朝練を終えて教室に行くと、なにやらざわざわしていた。


どうやら直紀の周りに人が集まっているみたい。


ちょっとだけ見てみようと思い、あたしもその集団に加わった。


「ちょっと、お前どーしたんだよ!雨も降ってねーじゃねーか!」


「いや、これはちょっと…」


集まりの中心には、ずぶ濡れになった直紀がいた。


なんで濡れてんの!?しかもなんでそのまま学校来たの!?


近くにいた女の子はタオルを差し出したけど、直紀の下にはちょっとした水たまりができていてもう遅かった。


「なーなーどーしたんだよ!」


「あ、わかった!お前朝一でプールに飛び込んだんだな?そうなんだろ!」


男子が冗談交じりにそう言っている。


ちげーよ、と否定していた直紀は体育ジャージに着替えてくると言って教室を出て行った。


それと入れ替わるようにしてなぜか雅人が教室に来た。


「おーい!直紀!どこ!?」


どうやら直紀を探してるらしいけど、ここにはいない。


「あ、森下!直紀は?あいつ、びしょびしょで…」


「えっと、落ち着いて?」


妙に焦る雅人を落ち着かせて、直紀は着替えに言ったことを説明した。


すると雅人ははぁとため息をついて、そっか、ありがとうと言った。


あんまり急いでいたから、どうかしたのかと思ったけど、そんな大きなことではないみたい。


そう思っていると。


「あいつ、家の近くの川に飛び込んだんだよ。馬鹿だろ」


今の時期川に飛び込むのは、いくらあったかくなったと言っても寒すぎる。


なんで川なんかに…


雅人に聞こうとしたけど、じゃあね、と言って行ってしまった。


遠ざかっていく背中は大きくて、なんか男の子だなーって感じがする。


ぼーっと眺めていると、視界の端から直紀がでてきた。


それに気づいた雅人があっという顔をして、なにかつぶやきながら軽く直紀を叩く。


雅人は、バーカと言ったように見えた。


それに反論するように、直紀が頭を叩こうとする。


でも背の小さい直紀は雅人の頭まで手が届かないみたい。


ふたりを見ていると、自然と笑みがこぼれてしまう。


きっと、仲がいいんだろうな。


そう思った。


私は一人っ子だからこういうのに憧れてしまう。


兄妹がいるってどんなだろう。


なんだかすごい兄妹が欲しくなった。


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