君を愛さずには いられない
「おまえにやってほしいことをリストアップしてある。」

佐竹は志穂のデスクにあるマウスを動かしてカーソルをPC画面に走らせた。

「このフォルダーだ。俺とのやり取りはここからメールできる。」

「わかりました。」

「ファイルを見て記憶したら俺にメールで知らせろ。」

「佐竹さんは外出になりますか?」

今度は横目でにらまれた。

志穂は不思議に思った。

この人はいちいち相手をにらまないでは気が済まないタイプなのだろうかと。

変わった人種だとも思った。

じきに慣れるだろうと気にしないことにした。

「佐竹さん。」

志穂の呼びかけには基本無言だということも頭の隅にメモった。

「わからないことがありましたらメールしてもよろしいでしょうか?」

彼の不機嫌オーラが辺りに充満していることは

他のスタッフも気づいているはずだ。

誰も何も言わないので

志穂は薄々わかってきた。

ここに女子社員が一人もいない理由を。

そして理解できた。

佐竹が教育係りである以上

過去に採用された女子社員は全員この仕打ちに耐えられなかったからだと。

そう思ったら志穂は俄然やる気が出てきた。

何が何でもこの会社で働こうと決意した。

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