君を愛さずには いられない
またある時はLAへの出張に同行した。

本社から抜擢された凄腕ワンマンの鏑木(カブラギ)が空港で俺たちを出迎えた。

正確にはユリを出迎えにきた。

ユリは満面の笑みで鏑木と握手を交わした。

俺は荷物を鏑木の車のトランクに詰め込み

助手席のドアを開けてユリが乗り込むのを待った。

ハンドルを握る鏑木と話すユリを

俺は後部席から視界に入れていた。

自分の目の前でユリが他の男と談笑するのを

俺は内心快く思えなかった。

つまり完全なる嫉妬だ。

それに鏑木は俺が見てもムカつくほどの完璧な男だった。

彫りが深く漆黒の髪が豊かで

ちょっとした笑顔にでさえ包容力がにじみ出た。

鏑木は本物の大人の魅力を十二分に持ち合わせていた。

それに比べ俺は見ようによってはユリの単なるツバメだ。

若いだけでなんの重みもなく

ユリを陰で支える存在と自負できる余裕もない青臭いガキだった。

おまけに相当なバカだった。

俺は気づくべきだった。

LAへの出張が毎月あることの意味をだ。

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