君を愛さずには いられない
ユリと鏑木はデキていた。
それは俺が入社する前からだと推測できた。
いや確信できた。
なぜなら過去のファイルを見ただけでも
ユリがLA支社と
正確には鏑木とタッグを組んで更新している案件が数多くあったからだ。
俺は帰国した深夜デスクでそのことを突き止め一人で泣いた。
無言で涙を流すまま俺の中で時間が止まった。
自分のアホさ加減に途方に暮れた。
さらに追い討ちをかけるように
翌日ユリのLA支社転勤の辞令を耳にした。
ユリが悲願のLAへの異動をわずか2年足らずで成功させたことは
社内で大きな話題になった。
俺はユリの野望を知らず
今までまったく眼中になかった。
それを事実上フォローしたのは不覚にも俺自身なのにだ。
信じられない現実に
その時の俺は持って行き場のないやるせない気持ちが余りにも強かったせいで
日を追うごとに哀しみと憎しみがない交ぜになった苦しみにもがき
そんな激情を胸の奥にひた隠して
吐き気をこらえながら
ユリの渡米準備をこなさなければならなかった。
彼女はロスへ飛び立った。
そのままなら推進室でマネージャー格に昇進できたが
失恋の痛手は自分で思うより大きかった。
俺は商社を辞めようと決断した。
ユリから伝授されたスキル全てを捨てた。
引き留める局長を振り切ったが
結局はグループ会社の傘下に当たる
今のセキュリティ・パレット・ルビ・カンパニーに
異動の形で留まることになった。
また一番下から出直しだ。
俺の辞表を受理した局長が最後に言った。
「佐竹、高岡のことは恨むな。皆が理解できなくても私だけはわかっているつもりだ。」
局長だけは俺とユリの間に何があったかを知っていた。
彼は俺の固い顔をデスクから見上げて
何かをあきらめたような眼差しを向けた。
「はい。」
と俺は歯の間から苦々しく返事を絞り出した。
「パレットは若い連中ばかりだ。気楽に行け。いいな。」
局長の温かい言葉にも俺は無表情だった。
仮面のように顔を硬くしたまま
俺は局長室を出た。
心の中は空虚しかなかった。
それを噛み締めて社を出た。
それは俺が入社する前からだと推測できた。
いや確信できた。
なぜなら過去のファイルを見ただけでも
ユリがLA支社と
正確には鏑木とタッグを組んで更新している案件が数多くあったからだ。
俺は帰国した深夜デスクでそのことを突き止め一人で泣いた。
無言で涙を流すまま俺の中で時間が止まった。
自分のアホさ加減に途方に暮れた。
さらに追い討ちをかけるように
翌日ユリのLA支社転勤の辞令を耳にした。
ユリが悲願のLAへの異動をわずか2年足らずで成功させたことは
社内で大きな話題になった。
俺はユリの野望を知らず
今までまったく眼中になかった。
それを事実上フォローしたのは不覚にも俺自身なのにだ。
信じられない現実に
その時の俺は持って行き場のないやるせない気持ちが余りにも強かったせいで
日を追うごとに哀しみと憎しみがない交ぜになった苦しみにもがき
そんな激情を胸の奥にひた隠して
吐き気をこらえながら
ユリの渡米準備をこなさなければならなかった。
彼女はロスへ飛び立った。
そのままなら推進室でマネージャー格に昇進できたが
失恋の痛手は自分で思うより大きかった。
俺は商社を辞めようと決断した。
ユリから伝授されたスキル全てを捨てた。
引き留める局長を振り切ったが
結局はグループ会社の傘下に当たる
今のセキュリティ・パレット・ルビ・カンパニーに
異動の形で留まることになった。
また一番下から出直しだ。
俺の辞表を受理した局長が最後に言った。
「佐竹、高岡のことは恨むな。皆が理解できなくても私だけはわかっているつもりだ。」
局長だけは俺とユリの間に何があったかを知っていた。
彼は俺の固い顔をデスクから見上げて
何かをあきらめたような眼差しを向けた。
「はい。」
と俺は歯の間から苦々しく返事を絞り出した。
「パレットは若い連中ばかりだ。気楽に行け。いいな。」
局長の温かい言葉にも俺は無表情だった。
仮面のように顔を硬くしたまま
俺は局長室を出た。
心の中は空虚しかなかった。
それを噛み締めて社を出た。