君を愛さずには いられない
局長はデスクの上に肘を立て顔の前で両手を組んだ。

「推進室には即戦力のある人材がおらん。君以外には。」

「あの時、辞職すべきだったと後悔してます。」

「そんな風に言わんでくれ。」

局長は疲れた顔で俺を見上げた。

「すみません。私情を交えてしまって。」

「いいんだ。」

「それで、渡米までの期間は?」

「2週間だ。」

俺の思った通りだ。

早すぎる。

「佐竹、パレットの総括部長中野くんには話がついている。高岡のことも言い含めておいた。」

「そうですか。」

「中野くんはキレのある男だ。私が伝えた以上にわかっていると思う。」

「局長、俺は以前と違います。」

「ほう。それなら私も安心だよ。君が引きずるとわかっていながら私は何も忠告できなかった。」

「過去をプラスに思えるようになるまでには時間がかかりすぎました。」

「それでいい。LA支社長の服部くんはなかなかできた男でな。高岡ごときで動じる玉じゃない。その点鏑木はまだ青いな。」

局長はそう言ってクックッと笑った。

それなら俺はどんだけ青いんだ。

「佐竹、君は別格だ。」

「別格?」

「私のあとを引き継げる。」

「・・・・・」

俺は言葉に詰まった。

そんな先のことまで頭にない俺にさらりと言う局長は

むしろ面白がっているようだ。

「まだ先のことだ。」

俺はどう言っていいのかわからなかった。

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