君を愛さずには いられない
「佐竹さん、お帰りなさい。」

河村がミーティングルームから出てきた。

その後ろに中野が続いた。

俺が彼に目線を送ると

彼は極わずかにうなずいた。

河村が席に戻った。

「佐竹さん、ミーティングの内容はすぐアップしますので少々お待ちください。」

彼女はすでにキーボードをマシンガンのように叩いていた。

「ありがとう。急がなくていいよ。」

俺がそう言うと

彼女の両手が突然宙に浮いて動きが止まった。

画面を見ていた顔をゆっくりと俺の方に向けた。

「今なんて言いました?」

「話があるんだ。」

まだ怪訝な顔をしている彼女に

俺は静かな口調で話し始めた。

「まず、出張に同行してほしい。できるか?」

「はい、大丈夫です。」

「かなり長期だが、それでもいいか?」

「はい、まったく問題ありません。」

「良かった。ありがとう。よろしく頼む。」

俺は彼女に頭を下げた。

彼女のポカンとした顔を見て

俺は内心密かに笑いをかみ殺した。

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