君を愛さずには いられない
「佐竹さん、お待ちしていました。」

河村の母ミランダにキスをされまくり

強烈なハグをされ

俺には理解できない仏語で会えた喜びを

激しい身振り手振り付きで叫ばれた。

河村が割って入り早口な仏語で母親をたしなめた。

「ママン、ジンがビックリしてるでしょ。いい加減にしてちょうだい。」

母親はやっと俺から離れ

自分の娘に向かって何やら言ってから

俺の腕に自分の腕を絡ませて

リビングへ迎え入れた。

「ミランダ、佐竹にシャンパンを。」

父親が自分の妻の歓迎振りを明らかに仕方ないと思いつつも

彼も俺に何か言いたそうな様子でいることはすぐに察した。

「私としたことが大切なゲストにグラスを忘れていたわ。」

とミランダはキッチンの方へ向かった。

引き換えに父親が俺に日本語で言った。

「ミランダが大袈裟なものですまなかった。君が来るのを首を長くして待っていたものでね。」

「ご招待ありがとうございます。」

俺は彼に礼代わりにワインを手渡した。

まさか手ぶらでは面目立たない。

「気遣いをありがとう。あとでゆっくり話そう。」

「はい。」

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