君を愛さずには いられない
ミランダがトレイに4客のシャンパングラスをのせて運んできた。

「シン、乾杯をお願いね。」

夫に寄り添う妻は自分の伴侶を誇らしげに見上げた。

「では、佐竹の歓迎を祝して乾杯。」

4人でグラスを合わせた。

「もうすぐパイが焼きあがるわ。シホ、手伝って。」

「ウィ、ママン。」

ミランダは娘とキッチンへ消えた。

俺は河村の父親とソファにかけて話した。

彼はセキュリティのプロだ。

話題はやはり米国内の情報系の裁判沙汰や

日本における最新の傾向に関心があるようで

俺を相手にかなり細かい内容まで語ってくれた。

「佐竹、君はいつかは日本に戻るだろう?」

「はい、2年後には帰国しています。」

「志穂はどうだろうか?」

「彼女も連れて帰りますが。」

「そうか。」

娘が海の向こうだと寂しいのだろうか。

やはり可愛い娘ほど手元に置いておきたいものなのか。

ランチはミランダお手製の巨大なチェリーパイが

ダイニングテーブルをあらかた占領し

シーフードパスタとグリーンサラダが並んだ。

どれも素晴らしく美味で腹に心地よく収まった。

パイにはアイスクリームが添えられ

バニラの濃厚な味に驚いた。

俺は河村家の明るくオープンな雰囲気と

河村の笑顔になぜか癒された。

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