君を愛さずには いられない
「ジン、聞いてもいいかな?」

今度はローリーが言った。

「何でもどうぞ。」

「このままずっと見とれていてもいいかしら?」

「何だって?」

「ジンは信じられないほど美しくて、この世のものとは思えないの。」

「また始まった。ローリー、ジンがあなたを可笑しな目で見てるわよ。」

キャシーにたしなめられても

ローリーは尚もトロンとした表情を俺に向けていた。

「ぜひデッサンにしてみたいの。ヌードはダメかしら?」

「ヌードって全裸か?」

「そうよ、一糸まとわぬっていう意味よ。」

俺は首を横に振って丁重に断った。

「ジン、ローリーのことは気にしないでね。見るものすべてをアートな画にしたいのよ。」

「君のアーティスト魂は熱いってことだ。」

ローリーは俺の言葉に感激の声を上げた。

二人の相手をしていたら俺のコーヒーは冷めてしまった。

河村は大男たちに囲まれて何やら盛り上がっていた。

俺は彼女の本当の笑い声と本物の笑顔を初めて見た。

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