君を愛さずには いられない
毎朝近くのカフェへ焼きたてのクロワッサンを買いに行くと

店内に漂っているバターの芳酵な香りに包まれた。

あとはミルクたっぷりの温かいカフェオレさえあれば完璧だ。

俺はこのフランス流の朝食にはまった。

「またクロワッサンなの?よく飽きないわね。」

志穂は味噌汁と白米が好みだ。

フランス人の血を受け継ぐ者にしては

これに満たされないのが不思議だ。

俺は東京に帰った時

焼きたてのクロワッサンをどこで調達すればいいかを

今から考えあぐねていた。

志穂いわく「自分で焼けば。」

だそうだ。

なるほど。

これはもうカナダにいる志穂の母ミランダの領域だと思った。

志穂にそう言ったらバカにされた。

「はあ?」

とすっとんきょうな声を出して俺を制した。

「冷凍食品にあるからレンジでチンするだけよ。」

「マジ?」

「マジよ。」

志穂は俺の悩みをいとも簡単に解決してしまった。

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