君を愛さずには いられない
中野が引いた椅子は超ハイパー級イケメンの隣の席だった。

志穂はその椅子に行儀よく腰かけた。

「彼は佐竹仁。1年先輩として河村さんの教育係りを担当します。」

そして佐竹に向かって言った。

「佐竹、大役だ。頼みましたよ。」

佐竹は無表情な視線を志穂に投げた。

志穂は佐竹に頭を下げながら小さく言った。

「よろしくお願いいたします。」

中野は無言でいる佐竹に爽やかな声でもうひと言放った。

「佐竹、限界まで優しく教えてあげてくださいね。」

志穂は何のことやら理解できず

初日から何か面倒なことでも起きやしないかと少し気になった。

「では朝礼を始めます。」

爽やか面接官中野は窓際へ歩きながら話し続けた。

「いつもの周知事項になりますが、体調管理をしっかりお願いいたしますよ。」

「ウッス。」

男性ばかりのせいかその返事が普通のようだ。

志穂の「はい。」という声だけが響いた。

「志穂ちゃん、めちゃ可愛い!」

誰かが叫んだ。

「ヒュウ~!」

と別の声が響いた。

「静かに。連絡事項は以上です。本日も頑張りましょう。」

「ウッス!」

社員は一般的な見解よりもはるかにレベルの高いイケメンだらけで

しかも教育係りはその中でも抜きん出たイケメンで

朝一から超不機嫌そうなのもナンバーワンだ。

志穂にとって多難な前途になることは本人以外はすでに経験済みだった。

なぜなら今までにも採用された女子社員が1週間ともたずに皆辞職したからだ。

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