君を愛さずには いられない

「佐竹さん。」

「何？」

佐竹はサラリと前髪をかき揚げ

鋭い眼差しで志穂をにらんだ。

彼はチェアごと志穂の方に向いて長い脚を組んだ。

「業務の詳細は営業アシスタントだと聞いています。」

「だから？」

と返され彼は腕を組んだ。

志穂は佐竹の言い方にムッとしそうになるのをグッとこらえた。

「私は佐竹さんのアシスタントになるのでしょうか？」

彼はいかにも嫌そうに

本当に嫌そうにチッと舌打ちした。

志穂はそんな彼のあらかさまな仕打ちに両目を見開いた。

鼻息まで荒くなりそうなのをなんとかこらえることができたのは

志穂が佐竹より分別のある社会人だという事実を

いつか彼に知らしめるためだ。

必ずその時が来ると思い

今は一応自分の直属の上司になる佐竹を立てておこうと

気持ちを入れ換えた。

「佐竹さんの足を引っ張らないようアシスタントに徹しますのでご指導共々よろしくお願いいたします。」

そう言って座っていたチェアから腰を浮かせて深々と一礼した。

「ああ。」

そんなことはどうでもいいといったような彼の気のない返事に

志穂は頭に血が登った。

いくらこの人がイケメンの頂点に君臨しようと

なにがしかの挨拶くらい言えないのだろうか。