cherish【チェリッシュ〜恋のライバルは男!?〜】

「ふふっ…」


不意に笑い声が聞こえて、顔を上げる。


「心、アンタそんな事言いに来たの?」


シフォンケーキみたいな、ミサキちゃんのふわっとした笑顔に、張り詰めていた私の気持ちも少し和らいだ。


この前みたいに、『関係ない』って言われるかと思ったから…


「ありがとう」


「え?」


「心配してくれたんでしょ?」


「う、うん…」


嘘。

ホントは不安だったからだよ。


ミサキちゃんが本当に杏奈さんを好きなのか。


「そうよね、遠慮しなくてもいいわよね。」


ズキン、と胸が痛む。


「…どうするの?」

喉が乾いて、うまく喋れない。


「どうもしないわ。
今までどおり、ただ好きでいるだけ。」


そう言って笑ったミサキちゃんの顔が、どこか切なそうで泣きそうになった。


ミサキちゃん。


私はミサキちゃんみたいに、なれないよ。


好きな人に好きな人がいて、それでも変わらず好きでいられるなんて…


「ミサキちゃんはスゴいね。」


「何よー、からかわないでくれる?」


ううん、本当にそう思うよ。


でも、すごく苦しい。



そんなミサキちゃんが私は好きなんだ。


報われないのに。


バカみたいかな。



< 143 / 214 >

この作品をシェア

pagetop