cherish【チェリッシュ〜恋のライバルは男!?〜】
予想通り紺野君は1日で人気者になった。


「千明!見学来るだろ?!」

「おう!」


バスケ部の男子は既に呼び捨てだし…


「かっこ良いよねー!」 
「彼女いるのかな!?」

「さっき聞いたらいないって!」

「嘘!ラッキー☆」

女子は女子で彼の話題で盛り上がっている。


私はというと…ホームルームの後から彼を取り囲んでいた輪にも入らなかったので、あの朝の会話以来話していない。

預かっていた資料集も、彼が席を立っていた休み時間の間に机に置いておいた。

わざわざみんなの間を割って話すような事もないしね。

正直なところ…少しの間でちょっと遠い存在になっちゃったなー、なんて勝手に寂しがってたりする。



「斉藤さん」

「?」

振り向くとそこには紺野君が立っていた。


「紺野君!」

びっくりして思わず立ち上がる。

「何やねん、ビックリし過ぎやろ」


そう笑う姿は、朝のあの時と同じ雰囲気で少しホッとした。


「転校初日どうだった?」

「どうもこうも…動物園の檻の中みたいやったわ!そんな転校生が珍しいん?」

「紺野君が珍しいんじゃない?」

「は?」

「目立つから。よく言われるでしょ?」

「んー…わっからんねんなー」


あらら、無自覚か。


「まぁとにかく、転校生への洗礼っちゅーん?話しかけられまくって…朝のお礼ちゃんと言えてへんかったなーと思って。ごめんなーありがとう!」

「あ、全然!てか、お礼なんていいのに」


意外と律儀なんだな。

思わず笑ってしまった。

「斉藤さんってさ…」

「?」

「か…「こころー!!!」


紺野君の言葉を割って入るかのように、聞き覚えのある声が響いた。



「…ミサキちゃん」


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