cherish【チェリッシュ〜恋のライバルは男!?〜】
「心!?」
紺野君がドアを開けた私を見るなり、声を上げた。
「何やねん!浴衣やん!
ちょー、言っといてや。
心の準備があんねんから!」
と口調は焦っているけど、終始笑顔。
「びっくりさせようと思って」
予想以上のリアクションだったけど。
「うーわ、思うツボやん、俺!かっこ悪!」
…着てみて良かった。
ふふっと笑うと、紺野君がにっこり笑った。
「行こか」
差し出された手に少しだけ躊躇う。
そんな私に紺野君が苦笑した。
「アカンっ!
心が笑うから、思わず調子乗ってもうた…」
差し出された左手が、恥ずかしそうにうなだれた。
私は無意識にその手を追い掛ける。
重なった手に、紺野君がハッとして顔を上げる。
「…はぐれちゃわないように」
こんな時に上目遣いのひとつでも出来たら、と思う。
思わず取ってしまった自分の行動が恥ずかしくて、今度は私が顔を上げられない。