cherish【チェリッシュ〜恋のライバルは男!?〜】
一瞬とはいえ、花火と同じくらい注目を浴びながら、人の流れに逆流していく。
トク、トク、トク…
紺野君の背中に耳を寄せると、僅かに彼の心臓の音が聞こえる。
その音と、温もりにホッとする。
弱ってる時ほど、人の体温がありがたい。
「なぁ心…」
「ん?」
花火会場を抜け、大通りまで出てくると、紺野君が口を開いた。
「…あんま無理すんな」
私の身体を支える彼の手に、力がこもる。
「しんどい時に、無理して笑ったりせんでいいねん。」
それは、
体調の事なのか。
精神的な事なのか。
…紺野君には、全部お見通しな気がした。
「俺の前でくらい、弱いところ見せてや」
なっ?と、振り向きながら微笑む紺野君を、私は直視出来なかった。
顔を紺野君の背中に埋め、ぎゅっと目を閉じた。
そうしないと、
泣いてしまいそうだったから。