cherish【チェリッシュ〜恋のライバルは男!?〜】
手慣れた手つきで、ボタンを縫っていくミサキを、机に肩肘をつきながら、ぼんやりと見た。
旭と杏奈ちゃんが付き合う前、杏奈ちゃんはミサキと付き合うんじゃないかと、俺は思っていた。
杏奈ちゃんがミサキを見る目は、恋する乙女の目をしていたし、
ミサキも彼女を気に入ってるようだったから。
ミサキは喋り方とか仕草はこんなだけど、男が好きな訳ではないと思う。
「…はい、出来たわよ!
うん、完璧!
ワタシってば、イイお嫁さんになれるわね☆」
…多分。
ウインクされながら、差し出されたジャケットを、苦笑いで受け取る。
しっかりと縫い付けられたボタンの仕上がりは、まさに完璧だった。
「なぁミサキ…」
「ん?」
「お前、大丈夫か?」
思わず口にした。
だって無理してるんじゃないか、って思ったんだ。
笑ったりとか、いつもの口調とか。
「何がよー、大丈夫よ?」
あはは、と笑うミサキ。
「なら、いいけど。」
何か悩んでるなら、話してほしい。
だけど言いたくないなら、今はその時期じゃないんだろう。
「まぁ、待ってるわ。」
そう言うと、ミサキは一瞬キョトンとしたが、すぐにふわりと笑った。
「ありがとう。」
男の友情ってやつだな、これ。