cherish【チェリッシュ〜恋のライバルは男!?〜】
その時、
「お兄ちゃーん!」
みんなの注目の的、心ちゃんがやってきた。
手を振って懸命に兄を呼んでいるが、当の旭はDSでのケンスケとの対戦に夢中だ。
彼女がかわいそうになった俺は、ミサキに声をかけた。
「おい、代わりに行ってやれよ。」
ここでのミサキからの返事としては“イエス”しか、俺の頭の中には無かった。
しかし、ミサキは正反対の言葉を返した。
「…嫌よ。
ヨシオが行ってきてよ。」
「はぁ?」
「お願いね。」
そう言うなり、ミサキは旭達の方へ行ってしまった。
えー、放置ですか?
そうですか。
俺は仕方なく、心ちゃんの方へ向かった。
彼女が注目されている理由は、転校生との熱愛発覚だけではない。
旭と似てはいないけど、彼女もまた魅力的な容姿をしているから、男女問わず人目をひくんだよな。
今もまた、黒目がちの大きな目をした可愛らしい顔と、スカートから伸びた白い脚がクラスメイト達の目を釘付けにしている。
俺が近づいていくと、気付いた心ちゃんに笑顔が広がっていった。
「ツネさんっ!」
うーん、おじさん癒されるなぁ
彼女が笑うといつも、ぱぁっと周りが明るくなる。
まるで、花が咲いたみたいだ。
と、恥ずかしい事を思ってみる。
「ハイ、心ちゃん。
旭に用事?
アイツ今、取り込み中みたいなんだよねー。」
「ゲームにですよね…
ホント、子供なんだから…。
あっ、じゃあコレ渡しといてもらえますか?」
どっちが年上かわからないコメントをした後、小さな紙袋を示された。
「いいよ。
お弁当?」
俺が紙袋を受け取りながら尋ねると、心ちゃんがコクリと頷いた。
「いいよなー旭は!
心ちゃんの弁当が毎日食えて!羨ましいぜー!」
これはお世辞じゃなくて、本心。
旭の家に行った時に食べた、心ちゃんの料理はマジで美味かったから。
しかも、こんな可愛い妹から弁当を届けてもらえるなんて…
俺は心の底から、家の手伝いひとつしない自分の妹とのトレードを希望している。