cherish【チェリッシュ〜恋のライバルは男!?〜】
「な…殴ったわね!」


だったら何よ、親にもぶたれた事無いっての?


「な…っ、明日香大丈夫?!」


「信じらんない!」


「この暴力女!」


それまで呆然としていた明日香の腰巾着達だったが、急に我に返ったのか、私を一斉になじる。


「…謝って」


明日香が怒りを堪えているのか、静かに呟きこっちを見据える。


だけどその目にさっきまでの激しさは無く、まるで子犬のようにウルウルしている。


何だ、結構可愛いじゃん。


「えー何なに?」

「何かーあの子が明日香の事殴ったらしいよ」

「え、最悪じゃん」


いつの間にか周りにギャラリーが出来ていた。



「…謝らない」


私のその言葉に非難の声があがる。


「うっわ、ありえなーい!」

「明日香ー、殴り返しちゃえ!」

「あはは、私らが許す!」

うるさいわよ、野次馬!


そんな周りの空気に明日香は動揺しているのか、目をキョロキョロと動かしている。


「てか、この子例の転校生のお気に入りじゃね?」

「あー、あのイケメン?」

「ついこの前まで清水君にべったりだったのにね」

「何、この弁当ーまた違う男狙ってる訳?」


まるでそれが汚い物かのように、足でお弁当箱を示す。

頭がカッとなる。

勢いに任せて右手を振り上げようとしたその瞬間、


「あら、何してるのー?」


この声があと少し遅かったら、私はどうなっていたのだろう。


ヘタしたら停学だったかも…。


声の主は振り向かなくてもわかる。


「「ミサキ様!」」


いつだってそうだ。


ミサキちゃんは私がピンチの時には、タイミングを見計らったかのように現れる。


小さい頃に好きだった戦隊物のヒーローみたいに。









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