cherish【チェリッシュ〜恋のライバルは男!?〜】
そんな目で見ないでよ。


そんな女の言う事信じないでよ



私の傷も見てよ。



私の心、ズッタズタだよ?


見てよ、このお弁当。


これね、この人達がまだ寝てるくらいの時間から作ったんだよ。


毎日毎日、化粧したり髪を巻いたりするよりも、お弁当作りや洗濯が優先。


この人達はそれを1回でもやった事があるの?


あるはずないじゃない。


あるんだったら、どんな嫌いな相手にだってこんな仕打ちはしないわ。




…自信作だった。

だし巻き卵のふわふわ加減とか

少し辛味をつけたきんぴらとか

夏バテ対策の豚のしょうが焼きとか…

どれも毎日バイトで疲れてるお兄ちゃんに、せめて昼食だけは栄養のあるものを、と思って作ったものだ。


それを届けに来ただけなのに


何で私、今こんな惨めな気持ちになってるんだろう。


「ここ…」

「引っ込んでろ、岬。」


不意に聞こえたハスキーボイス



「…旭?」


ミサキちゃんがびっくりしたような声を出す。

私も少しびっくりした。


その言葉に少し怒りが込められている気がしたから。

言ったっけ?

二人は今まで喧嘩もした事ないんだ。


「お前がいるとややこしくなる。」


そう言うと、しゃがみ込んでそれに手を伸ばした。


「あーあ…もったいねぇ!こいつは俺の弁当なんだよねー」


お弁当箱を拾い上げると、パッパッっと埃を払う仕草を見せる。


「まぁ見た目はアレだけど、中身は大丈夫だろ」


急にお兄ちゃんの大きな手が伸びてきて、頭に触れた。


「さんきゅー」


反則。

今まで一回も言った事なんか無いのに。


ここで言われたら今までの事チャラになっちゃうよ。








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