cherish【チェリッシュ〜恋のライバルは男!?〜】
「…もういいよ」


ミサキちゃんの目が大きく開く。


「許してあげる」


アイスにつられた振りをしないと素直になれない妹。


全てお見通しの兄。


適わないや。


「あらホント!?」


ミサキちゃんの顔に笑顔が咲く。


「それじゃあ明日一緒に学校行きましょうね!」


「それは無理」

きっぱりお断り。


「何でよ?!」


「それとこれとは違うの」


今日の事は許すけど、それまでの事までは許してません。


「はい、もう帰って!」


手で払いのける仕草をする。

「何なのよ冷たいわねぇ〜!」


口を尖らせるミサキちゃん。


いつもの2人のやりとり。


「うるさいなー、今日おばさん特製のビーフシチューなんだから!
早く帰ってあげてよね!」

「はいはい、わかったわよ!それじゃあね!」



と、背を向けて歩きだしたミサキちゃんが急に振り向いた。


「さっき千明から着信あったでしょ?」

「え?」


そういえば…

お兄ちゃん(実際にはミサキちゃん)からの着信の中に、
紺野君からの電話着信が一件あった気がする。


その他の異常な数の着信で、気を反らしていたんだけど。


「あの子、アンタに惚れてるんじゃない?」

「は?」


どっからその発想?


「じゃあね」


「え、あっ、ちょっと!」

私の呼び掛けを無視して、スタスタ帰って行くミサキちゃん。


な、何なのよ…





季節は夏。


あの思い出の続きも


ミサキちゃんが落としていった爆弾の意味も


全くもって消化不良。


まるでアイスみたいに、

私の頭の中でマーブル状に溶け合っていった。






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