◆Woman blues◆
慌ててソファから立ち上がる太一と眼が合い、私はぎこちなく笑った。

「ビックリさせてごめん。大丈夫だよ」

「見せて」

もう、どこまでも優しい。

リビングからキッチンへとやって来て、私の目の前に立つ太一は、先に視線を私の指先へと落とした。

伏せられた眼が、通った鼻筋が、わずかに開いた唇が愛しい。

「……太一」

「少しだけ血が……ん?」

私の指をとる太一に、思いきり抱き付く。

「わ、夢輝さん?」

「暫くこうしてて」

本当は……このままじゃ嫌だった。

……抱いてもらいたい。

でも、自分からは言えない。

それを分かってもらいたい。

太一の首筋にチュッとキスをして、私は彼の胸に頬を寄せた。

「…………」

「…………」

ダメだろうか、こんな誘い方じゃ。

その時太一がクスッと笑った。

「……したい?」

ドキンと鼓動が跳ねる。

聞かれているのに頷けない。

「ねえ、夢輝さん。僕に抱かれたい?」

恥ずかしくてずっと隠していたい顔を、優しい手で上向かされる。
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