◆Woman blues◆
でも、確かに太一は変だったもの。

『女の勘』としかい言い様がなかった。

グジグジと湿っぽい私に、麻美は畳み掛けるように言い放った。

「何もなかったらそれでいいじゃん。彼に飛び切りの愛をあげなさい」

私は小さく息をつくとコクンと頷いた。

◆◆◆◆◆◆

土曜日、午後六時。

私と麻美は、マンションの出入り口の見えるカフェの窓際を陣取り、その時に備えた。

緊張のあまり、大好きなモカも味気なく感じる。

「週末はいつも二人で過ごしてるんでしょ?彼、なんて?」

私はカップを両手で包み込みながらそこに視線を落とした。

「……案の定、大学時代の親友と会うって」

「……来たわよ」

弾かれたように顔をあげると、私はマンションの入り口を凝視した。

遠目からでも、太一のスラリとした身体はよく目立った。

パーティスーツに身を包んだ太一は、雑誌から抜け出てきたように素敵だった。

「センスいいわね。ネクタイとラペルの幅が絶妙。色もよく似合ってるわ」

本当に素敵で、私は太一から眼が離せなかった。

「行くわよ」

いいのだろうか、麻美のこの声に頷いて。

このまま彼を尾行した先に、何が待っているのだろう。
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