◆Woman blues◆
課長が張り付いたように私を見つめた。

「お前、俺を脅すのかよ」

「だってよく考えたら、次期社長といえど鮎川君はまだ平社員ですよね?なら別に皆に報告するのと同じタイミングで問題ない筈です」

課長はなにか言いたげに眉を寄せたけど、私はにっこり笑ってペコリと頭を下げた。

「じゃあそういう事でよろしくお願いします」

ミーティングルームを出たところでタイミング悪く太一と出くわしてしまった。

ぶつかりそうになったところを目一杯身体を反らしてかわす。

彼の視線は感じたけど、私は太一を見ないようにした。
 
もう決めたんだ。

男なんて要らない。

好きな人がいるから、不安になるんだ。

信じてバカを見て、傷付いて泣くのはもうごめんだ。

自分以外を信じなければ痛い思いをしないですむ。

期待しちゃダメ。

もう、自分以外には期待しない。

「夢輝さん」

私は太一の呼ぶ声を無視すると、そのまま一課のオフィスへと向かった。

◆◆◆◆◆

数時間後。

「……そっか」

麻美がポツンと呟いた。

「けど、まだハッキリ」
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