◆Woman blues◆
◆◆◆◆◆◆◆

……最悪。

二時間後、散々『えん』で飲みまくった私が帰宅すると、太一が立っていた。

私の部屋の前に。

ヒールの足音のせいか、太一は既にこっちを見ていた。

私は一瞬だけ立ち止まったけど、絡んだ視線を一方的にそらし、グッと唇を引き結んで玄関ドアに近付いた。

「夢輝さん」

私は何も答えない。

ドアに掛けた私の手を、太一が掴んだ。

それを無言で振り払う私。

「待ってよ、夢輝さん」

太一が素早く私とドアの間に片足を割り込ませた。

話す気はない。

声を発するのすら嫌だ。

私は太一を睨んだ。

太一の腕が私の腰に回る。

「触らないで」

暴れる私を太一が強引に胸に抱いた。

「離さないと大声を出すわよ」

「出せばいい。だけど離さない」

当たり前だけど、いつもの優しい声じゃなかった。

こんな硬く冷たい声を出す太一なんか想像出来なくて、私は思わず身をよじって太一を見上げた。

案の定、太一の瞳にいつもの柔らかい光はない。
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