◆Woman blues◆
たちまちのうちにゾクゾクとした感覚が走る。

「傷付けた事は謝ります。でも、裏切るようなことはしてない」

食器棚に押し付けられた身体の前に太一の腕が回り、彼は腕一本で私を引き寄せるとギュッと抱き締めた。

「……太一」

「夢輝さん」

私は太一に抱き締められたまま、静かに口を開いた。

「太一が好きだったよ。七歳も年上の私をお姫様のように大切にしてくれてたし、いつも穏やかで優しくて、二人でいると本当に幸せだった。でももう止めよう」

私は太一の腕に手を置くと、ゆっくりとそれを解いた。

「……そこまで言うなら、リアナさんとの事は信じるよ。でも、もう私達の関係は終わりにしよう」

「どうしてですかっ!!」

荒々しく二の腕を掴まれ、乱暴に向き直らされて、私は太一に瞳を覗き込まれた。

グッと寄せた眉が苦痛に満ちていて、私が眼を見張る中、彼は続けた。

「いい加減に子供みたいに拗ねるのはよして、僕の話を聞いたらどうですか?!」

な、なんですって?!

私が子供みたいに拗ねてるですって?!

冗談じゃない!

「逆ギレしないでよ!」

「は?」

太一が眉を寄せたままで私を見据えた。

「恋人同士なんだから、何かあった時は話を聞き合うものなんじゃないんですか?!
それともなんですか?やたらと歳の差ばかりを気にしてますけど、僕が年下だからって、舐めてるんですか」
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