◆Woman blues◆
「夢輝、大丈夫だから。僕がそばにいるから」

なんて嬉しい言葉なんだろう。

「うん」

私は頷いて眼を閉じた。

スウッと意識が遠退く感覚。

後にも先にもこんな経験は初めてだった。

◆◆◆◆◆◆◆◆

「夢輝」

あ……秋人が帰ってきた。

「夢輝」

頭も瞼も重いけど、取り敢えず返事をしなきゃ。

「秋人、お帰り。ちょっと待ってね、すぐにご飯の用意……」

そう言った私の額に、彼はチュッとキスをして、

「いいんだ。ゆっくりお休み」

「いいの……?じゃあ、もっとキスをして」

「いいよ」

フワリと空気が動いて、唇に柔らかい感覚が広がる。

ああ、幸せ。

私は口を開けて彼を迎える準備をした。

「……もっと」

「……夢輝、」

秋人の大きな手が、私の背中に回る。

ギュッと抱き締められるこの感覚。

「秋人……私でごめんね」

謝ってしまう自分が情けなくて、またしても涙がこぼれた。

もう、年取ると涙腺ユルくなるなんてきくけど、こーゆー感じなのか。
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