◆Woman blues◆
それどころか、鼻からも……。

鼻から……。

鼻……血……。

そうだ、私、鼻血が出たんだ。

血は止まってる。

あれ、あの後どうなったんだ?

ちょっと待ってくれ、ここはどこなんだ。

自分の家じゃないのは分かる。

軽い夏布団はやたらと気持ちいい。

いや、夏布団はこの際どうだっていいんだけど……。

怖くて動けなくなり、私は硬直した。

その時、

「夢輝」

……秋人の声じゃない。

ということは……今キスしたのも、秋人じゃなくて……どなた?

「あの、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません」

私はそう言って身を起こすと、ベッドの上で正座をした。

なのに、途端にクラリとして身体が傾いた。

「あぶな……」

ギュッと眼を閉じて衝撃を受け止めようとしたけど、咄嗟に手を伸ばして頭をかばってくれた彼の胸に、私は反動で飛び込んでしまった。

「う、わ」

彼はまさか私がそんな勢いで胸に飛び込んでくるなんて想定外だったらしく、反射的に片手で後ろに手をついたものの、そこにベッドはなかった。

ガツン!ドサッ!と無惨な音が響く。
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