◆Woman blues◆
少しドキッとしながら俺がスマホを返すと、リアナは悪戯っぽく俺を見上げた。

「太一が夢輝と付き合っちゃえば秋人を私が貰えるのに」

……全く。

「きゃあ、痛ーい!」

俺はリアナの額を指で弾くと、再び『夢輝』に思いを馳せた。


◆◆◆◆◆◆


夢輝さんとぶつかったのは偶然だった。

弾けるように後ろへ転んだ彼女を見た時、すぐにリアナのスマホの中の『夢輝』だとわかった。

子供みたいに鼻血を出した彼女に、正直笑いそうになったが、直ぐにそれどころじゃないと気付いた。

彼女の様子が変だったからだ。

抱き上げると、クタリと俺に身を預けて夢輝さんは眠ってしまった。

余程飲んだのか、アルコールの匂いが鼻をつく。

それにしても本当に可愛らしい女性だ。

ドストライクで俺の好みだ。

ベッドに寝かせて名前を呼ぶと、意外にもすぐに彼女は返事をした。

けれど酔っているのも手伝って寝ぼけているようで、俺を恋人と勘違いしているみたいだった。

『秋人……私でごめんね』

俺の腕の中で泣いた姿とこの言葉で、一気にリアナとのあの会話を思い出した。
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