◆Woman blues◆
「きゃあ、太一っ」

腰を持たれて抱き上げられ、太一は私ごとグルグルと回転した。

「やったあ!スゲーッ!うれしい!」

「太一、回らないで、気分悪くなるっ」

「すみません」

言うなりパタッと止まると、太一は私の唇にキスをした。

甘いキスを受けていた最中なのに、太一はフッと私から顔を離すとこう切り出した。

「そうだ、忘れてました」

「……なに?」

「夢輝さんの辞表は、その日の内に破って捨てましたから」

「え」

その日の内に?!

……絶対課長が喋ったに違いない。

黙ってたら出世に響くし。

「当たり前でしょう?これから夢輝さんには靴について多くを学んで頂きます。株式会社A&Eの新部門を担う存在になるんです、あなたは。辞めるなんてとんでもない」

太一は私の腰に腕を絡めると甘く笑った。

「もう、あなたを離しません。あなたはずっと僕のものです、永遠に」

「太一……」

再びやってきた柔らかな唇の感覚に、私は思わず眼を閉じた。

それから、回した腕に力を込めて太一の身体を抱き締める。

ずっと彼を愛するって誓いながら。
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