◆Woman blues◆

Goodbye『Woman blues』

◆◆◆◆◆◆◆

数日後。

麻美がニコニコと笑って言った。

「じゃあ、婚姻届を先に出したの?」

「そう」

「へー、王子、優しいじゃん!」

「うん」

いつの間にか太一の呼び名は麻美の中で『王子』になったらしい。

紙切れ一枚と言えばそれまでなんだけど、太一はこう言った。


「先に、役所に提出しておきましょう」

「式もまだ決まってないのに、いいの?」

「はい。じゃないと僕が落ち着きませんから」

涙が出そうになって、私は太一にしがみついた。

「わ、夢輝さん?」

嘘ばっかり。

私を少しでも安心させたいから、太一はそう言ったのだ。

「太一……大好き」

「僕も。ねえ、夢輝さん。先に子供、作りませんか?」

「へ?」

「いつか言いましたよね? 好きになった人の子供が産みたいって。なら、早い方がいい。靴の事はその後でも大丈夫だし」

そこで泣きそうだった私の顔が完全な泣き顔に変わってしまった。

「そ、んなの。だって普通は二人だけの新婚生活を味わって、子供はそれからって」
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