◆Woman blues◆
vol.1
足音
「用意はいい?行くわよ」
「……わ、わかった」
キラッとした瞳でこちらを見た親友の麻美に私、柴崎夢輝(しばさきゆめき)はぎこちなく返事を返して深呼吸をした。
週末。
場所は東京駅中央口付近。
夏の日暮れは遅く、午後七時でも十分明るい。
オフィス街から駅へ向かう人の数も多く、週末独特の浮き足だったような雰囲気がそこやかしこでみうけられる。
私は見失うまいと、愛しい彼の背中……東郷秋人の広い背中を凝視しながら歩を進めた。
オフィス街にある彼の会社からずっとつけているが、今のところ彼に怪しい素振りはない。
「メトロかな?それともタクシー?」
「接待だって言ってたからタクシーじゃないかな」
「独りで?!普通、他に誰かいるでしょ?部下のひとりも連れないで接待ってゆーのも怪しくない?」
「…………」
「まあ、鈍いアンタがこんな思いきった行動に出る気になったんだもんね、彼も油断しまくりでボロが出てきたっつー感じか」
モロ図星で、私は何も言えないままグッと言葉に詰まった。
……そう。
どうして私が付き合って一年になる恋人、東郷秋人を尾行していたかと言うと……それは徐々に生まれた彼への疑惑のせいであった。
「……わ、わかった」
キラッとした瞳でこちらを見た親友の麻美に私、柴崎夢輝(しばさきゆめき)はぎこちなく返事を返して深呼吸をした。
週末。
場所は東京駅中央口付近。
夏の日暮れは遅く、午後七時でも十分明るい。
オフィス街から駅へ向かう人の数も多く、週末独特の浮き足だったような雰囲気がそこやかしこでみうけられる。
私は見失うまいと、愛しい彼の背中……東郷秋人の広い背中を凝視しながら歩を進めた。
オフィス街にある彼の会社からずっとつけているが、今のところ彼に怪しい素振りはない。
「メトロかな?それともタクシー?」
「接待だって言ってたからタクシーじゃないかな」
「独りで?!普通、他に誰かいるでしょ?部下のひとりも連れないで接待ってゆーのも怪しくない?」
「…………」
「まあ、鈍いアンタがこんな思いきった行動に出る気になったんだもんね、彼も油断しまくりでボロが出てきたっつー感じか」
モロ図星で、私は何も言えないままグッと言葉に詰まった。
……そう。
どうして私が付き合って一年になる恋人、東郷秋人を尾行していたかと言うと……それは徐々に生まれた彼への疑惑のせいであった。