◆Woman blues◆
嘘でしょ。

「課長……この商品は二十代女性がターゲットで『ボーナスで自分へプレゼント』がコンセプトですよ?天然のピンクパールを売りにする予定なのに……。
人工パールなんてあり得ません。だって、カラット数もそう大きくないのにそれが人工だなんて。そんなの特別じゃありません。それならせめてデザインを変えさせてください」

「ダメだ。今から試作、トライ、撮影、秋には製本にウェブページ追加。間に合わない。だが安心しろ。人工にはかわりないが、極めて質の良いピンクパールが確保出来た」

「嫌です。これは冬の一押し商品なのに……」

「柴崎。分かるだろ?うちのピンクパールネックレスは冬のボーナス企画から外れたんだよ。デザイン二課のピアスにとってかわったんだ。けど冬の新作で売り出すことには代わりないから、気を落とすな」

ひときわ強い口調で名前を呼ばれて私は課長を見つめた。

「俺だって掛け合ったんだ。けど、俺達デザイナーは、仕入れ段階のトラブルに口は挟めない」

わかっている。

ここは会社だから。

唇を噛み締めたものの、上が決めた事項を私が覆せる訳がない。

「……工場長に会ってきます」

「……ああ。頼んだ」

バッグを掴んで身を翻すと、私はオフィスを後にした。

歩きながらスマホを操作し、直接隆太に電話をする。

「……夢?どうした?」

「隆太……今から時間作って。30分で行くから」

私のその声で隆太は事態を予測したのか、

「ああ、分かった」

低い声で一言彼はそう言った。
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