◆Woman blues◆
◆◆◆◆◆◆◆◆

午後九時。

シャワーを浴びて夕食を作りながらワインを飲む。

秋人と別れてから、家では食事をテーブルに並べ、ちゃんと座ってから食べることがなくなってしまった。

だって、思い出してしまうから。

秋人と向かい合わせに座っていたテーブルで、独りで食事なんかしたくない。

今頃彼は、あのスレンダー美人と二人で過ごしているのだろうか。

どうしても考えてしまって、自分が酷く汚くてしつこい、ドロドロな性格だと思わずにはいられない。

けど……やっぱり憎い。

私を捨てて若い女に乗り換えた秋人が、たまらなく憎い。

仕方がないと分かっているのに、私は一体いつまでこんな風に悩まなきゃならないんだろう。

今日は散々だった。

ピンクパールのネックレスは冬のボーナス企画から外されてしまうし、その事ばかりが頭に浮かび、うまく気持ちの切り替えが出来なかった。

だから株式会社ブライダルヴィーナスからティアラの製作依頼がきているのに、私だけデザインチームから外された。

『最近どうしたんだよ、柴崎。プライベートで何があったのか知らないが、とてもじゃないがブライダル関係のジュエリーをお前に任せられない』

課長にそう言われた時、血が出るくらい唇を噛み締めた。

じゃないと泣いてしまいそうだったから。

課長の言いたいことは分かっている。
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