◆Woman blues◆
世間から、なんの価値もないと見放された気がする。

いやだ、そんなの怖い。

私はここにいる。

気が付いた時にはスマホをタップしていた。

『……夢?どうした』

「隆太、会いたい。今から会いたい」

涙声の私に隆太は一瞬沈黙したけど、直ぐに低い声でこう言った。

「俺ん家、来るか?」

「うん行く、待ってて」

流れる涙を手で拭い、私は手早くメイクをすると部屋着を脱ぎ捨てた。

分かってくれるのはきっと、隆太しかいない。

同期で気心が知れていて、婚約破棄された私と離婚した隆太。

何でだろう。

こんなに胸がはやるのは何故なんだろう。

早く独りじゃないと実感したいから?

めちゃくちゃに泣けるのはきっと、隆太の前だけだから?

これ以上、どす黒くて醜い感情を抱えたくないから?

服を着替えてスマホと鍵を手にすると、私は部屋を飛び出した。

「夢輝さん?」

マンションのエントランスでスラリとした人影が眼に飛び込む。

……太一だった。

フワリと私を見て微笑んでいた太一が、次第に真顔に変わる。
< 42 / 143 >

この作品をシェア

pagetop