◆Woman blues◆
渡りきった時、自動販売機の隣に立つの隆太が見えた。

「……隆太」

私の姿を見付けた隆太は、少しホッとしたように表情を緩め、手を伸ばした。

迷いなく、私はその腕にしがみついた。

「夢」

「隆太……」

「分かってんのかお前、この意味」

私の後頭部に手を回すと、隆太は身を屈めた。

「なあ、分かってんのかよ。お互いガキじゃねーんだぞ」

隆太が精悍な頬を傾けて、僅かに眼を細める。

この意味。

「分かってる」

「じゃあ来いよ、俺の部屋」




◆◆◆◆◆◆

「ん……っ!」

「っ……!」

うす暗い隆太の部屋で、私達はきつく抱き合った。

隆太のがっしりとした熱い身体と、逞しい腕に抱き締められて、私は荒くなる息を抑えられなかった。

徐々に高まっていくのを隆太に知ってもらいたくて彼の背中に爪を立てる。

途端に隆太に強く肌を吸われて私は大きく仰け反り身体を強ばらせた。

「ダメだ夢、こっち来い」

隆太が腕一本で私を抱き起こす。

「隆太っ」

「……夢……」

乱れた息を吐き出しながら隆太は私を呼ぶと、唇にキスをした。

深いキスはまるで私を必要としてくれているようで、私は夢中で口を開けた。

そんな私の上でしなやかに動きながら、隆太は囁いた。

「俺が……いるから」

「……うん、うん」

隆太を感じながら、波のように押し寄せてきた感覚に、私は強く眼を閉じた。
< 44 / 143 >

この作品をシェア

pagetop