◆Woman blues◆
「ワイルドな工場長だって分かってるって!また話し合いな!」

「……うん、近々話すよ」

「それよりさ、気になるのはその歳下君よね」

ドキッと鼓動が跳ねた私を、麻美は見逃さなかった。

「惚れちゃった?その歳下君に」

私はビールジョッキを無意識に両手でギュッと持つと、そこに視線を落とした。

「好きっていうか……その……急に何だか気になり出したというか……」

慌ててジョッキを傾ける私を見て、麻美は箸を止める。

私はそれを眼の端で捉えると、ゆっくりと続けた。

「……正直、あんなに秋人を好きだったのに、その気持ちはもうないんだよね。裏切られて悲しくて、私だけが貧乏クジを引いちゃったみたいな思いはまだ存在してるけど」

麻美が私を見て頷いた。

「当たり前。簡単に許せるわけないわ」

「太一は……最初に出会った時から凄く優しくて……なんか彼といたら和むんだよね。彼の笑顔って、温かくて癒される感じ。それに凄くしっかりしてるし。
秋人が私の部屋から出てきてエレベーターで鉢合わせた時も、私の恋人見たいに接してくれて秋人から守ってくれた感じだったし。
その上あの日、隆太の家から戻った私を待っててくれた彼を目の当たりにして、それだけじゃなくなった。正直グラッときちゃって」

麻美が大きく頷いた。

「そりゃ、グラッとくるわ」

「でもね、彼って可愛いのに、ふとした顔が男っぽくてさ、年齢だってまだ30歳だよ?なんで私に優しいのかな。可哀想な独身アラフォー女だからかな」

「んー、分かんないね、正直」

「誰にでも優しいのを勘違いしたくない。だから怖くて私からはアクション出来ないよ」
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