◆Woman blues◆
私がそう言うと、麻美がニタッと笑った。

「誘うんじゃなくて仕掛けたら?」

「は?」

「あんたはね、凄く綺麗なんだよ?ちゃんと筋トレもして身体のケアもしてるし、性格だっていいし。婚約破棄もされちゃったことだしさ、新しい恋を見付けるために、少し頑張ってみるのもいいんじゃない?」

褒められて血圧が上がりそうになった。

いや多分急上昇したに違いない。

誘うんじゃなく、仕掛ける……。

麻美のその言葉のせいで、いくら飲んでも私は酔えなかった。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

帰ってシャワーを浴びると、私はソファにドサッと座り、頭を拭きながらテレビを見つめた。

……誘うんじゃなく、仕掛けるって具体的にどうすればいいんだろう。

仕掛ける……。

……思わず脳裏に、蟻地獄に入り込んだ蟻がもがいている画が浮かび、ブンブンと頭を振った。

……どっちも無理。

恋愛に関して、『誘う』も『仕掛ける』も私には出来そうじゃない。

……じゃあ、待ってるだけ?

待ってるだけで男が寄ってくるなんて……二十代でもあるまいし。

その時インターフォンが鳴って、振り向くとモニターに小さく人が見えた。

……嘘、なんで?

「隆太……?」

「おう」
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