◆Woman blues◆
私がモニターから呼ぶと、隆太は軽く手を上げた。

「待って、開けるから」

急ぎ足で玄関に行くとガチャリとドアを開けて私は隆太を見上げた。

「どうしたの、びっくりしたじゃん」

「下で連絡しようと思ったんだけど、ちょうど住人が帰ってきたからついでに入れて貰ったんだ」

「そう。取り敢えず上がって」

「ああ」

お邪魔しますと小さく呟くと、隆太は私の後を付いて廊下を進んだ。

リビングのソファを指差して隆太を座らせると、私は彼に尋ねた。

「どうしたの?なんか飲む?」

「いや、いい」

私の問いに隆太が首を振る。

途端に二人の間に沈黙が流れて、隆太は気まずそうに咳払いをした。

「あのさ、夢」

「……うん」

隆太があの日の事を言いたいのは分かっている。

「悪かった」

「……え?」

心臓がギュッと音を立てて、私はそれ以上の言葉が出ず、隆太を見つめた。

隆太は僅かに眉を寄せて、視線を落とした。

「あんな風にお前を抱いて」

私は慌てて首を横に振った。

「やだ、謝らないでよ隆太。私こそごめん。なんか隆太に迷惑かけちゃったね」
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