◆Woman blues◆
◆◆◆◆◆◆◆

翌日。

「夢輝さん、まだ行かないんですか?みんな先に行っちゃいましたよ」 

今日は月一で開催されるデザイン一課の飲み会だ。

私は太一の言葉にチラリと腕時計を見た。

「もう少しだけ。鮎川君、先に行ってて」

私が方眼紙に視線を落としながらそう言うと、太一は私の隣に椅子を持ってきて腰かけた。

甘い香りがフワリと漂い、太一との距離の近さにドキッとする。

「二人だけなんだから太一って呼んでください」

私はチラリと太一を見てからツンとややオーバーに顔をそむけた。

「……意味分かんない」

「分かんないんですか?鈍……」

フフッと太一は笑うと、私の髪を一房指ですくい取った。

ゾワッと皮膚が粟立って、ドキンと再び鼓動が跳ねる。

「な、なに」

声が上ずってしまって、私は焦って太一を見た。

ああやだ、私!

ドギマギしてるのが丸バレじゃん。

太一はそんな私を見て、瞳を甘く光らせた。

「そういうリアクションがダメなんですよ、夢輝さん」

意味が分からず、私はぎこちなく横を向いた。

「邪魔するなら先に行って。あともう少し考えたいの」
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