◆Woman blues◆
痛いところを突かれたけど、私は正直に返答した。

「……ジュエリーにも興味があったのは確か。徐々にやりがいを見出だせたし。そのうち忙しい日常に追われて、いつかいつかと思いながらもズルズルと今に至るって感じかな。
でも、一番の原因は踏み出す勇気がなかったって事」

グラスのワインを見つめながら私は言い終えて、再び苦笑した。

「ダメダメで恥ずかしいよ」

すると太一は即座に首を振って私を見つめた。

「全然ダメじゃないです。今日の夢輝さんは凄く素敵でした」

私は太一のその発言が意外で、思わず笑ってしまった。

「そう?!普通に仕事してるだけだよ。飲みに行き損ねたのは残念だったけど。あ、そうだ、待ってなくて良かったのに。太一まで親睦会行きそびれて」

私がそこまで言った時、太一が私のグラスをゆっくりと手に取った。

それから立て膝で、小さなローテーブル越しに私の指を掴んだ。

たちまちのうちに、心臓が煩く響き始める。

太一の顔は真剣だったけど、私は少し笑った。

「なに、どうした?」

「先に言っておきますけど、からかってないです」

からかわないで、と言うつもりでいた私は言葉を失い、息を飲んで太一を見上げた。

「夢輝さんを好きになってしまいました」

頭の中が真っ白にというか、動いていいのか呼吸はちゃんと出来ているのか、なにがなんだか分からない思いで、私は金縛りに遭ったように身動きが取れなかった。

「好きです」
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