◆Woman blues◆
◆◆◆◆◆◆◆◆

定時後。

「夢輝さん、どうします?一旦帰ってから出掛けるか、このまま行くか」

「帰るの面倒だから、このまま行こう」

私は大通りを目指しながら太一を見上げた。

「じゃあ、ついてきて」

太一はそう言うと、ギュッと私の手を握って歩き出した。

この辺りはオフィスが多い。

「ちょっと、太一っ、こんなところで手なんか……」

太一が私を振り向き様にフッと笑った。

「スーツ姿ならちょっと眼を引くかもしれませんけど、この格好ならそう目立ちませんよ」

わが社は営業部と役職以外の社員はスーツを着ない。

でも……まるで自覚がないんだよね、太一は。

ほら、きっと背だって180センチはあるだろうし、爽やか系のイケメンだし。

みんなに見られてる事に気付いてないのかな。

私は呆れながら太一を見つめた。

「なんですか?」

「自分がカッコいいことに気付いてないの?」

太一は私をマジマジと見つめた後、プッと吹き出した。

「夢輝さんにそんな事言われたら、ますます嬉しいですけど……あなたはまるで鈍い」

「鈍いって……」

そりゃ、鈍いから婚約破棄されちゃったのかも知れないけど……。

私は本当に自分が鈍いのか、鈍くないのかが分からずに眉を寄せた。
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